目白通りと不忍通りにはさまれた目白の高台に位置する日本女子大学目白キャンパスのランドスケープ。
近年、創立百周年を機に高層棟(百年館)を建設するなど一連の整備事業が行われ、その一環として正門前の象徴であった旧校舎(泉山館)を解体した跡地の広場整備である。
本作品は卒業生を対象とした設計者選定プロポーザルによる最優秀案である。プロポーザル当初から設計・監理までをカスヤアーキテクツオフィス(粕谷奈緒子・粕谷淳司)と共同している。
デザインは3つのキーワードによって成り立っている。
「トリニティー・サークル」とは広場全体を囲む、緩い三角形の円環を示している。これは目白通りと不忍通りに挟まれた三角形のキャンパスの形そのものを象徴しており、さらには、大学創設者である成瀬仁蔵が掲げた3つの理念を表している。単に、きれいな形を生み出すだけではなく、そこに意味と個性をあわせ持たせた大学の中心を示す造形となることを意図している。
「グリーンカーペット」は、広場中央に位置する芝生広場で、大学の中心としてふさわしい、明るい、晴れやかな場で、キャンパスで学ぶ学生や大学を目指す人々に対して魅力ある場所を提供している。近年完成した百年館の軸を形成するとともに、高層棟のスケールとも向かい合うことのできる伸びやかな空間が特徴である。また、グリーンカーペットの脇に添えられたトウカエデ・ハナチルサトの並木とともに、長い間キャンパスの顔であった泉山館の姿を象り、記憶の継承を試みている。
「既存樹木との共生」は、大学からの与件でもあるが、文京区指定樹や卒業生記念植樹が四季折々に表情を変える姿はキャンパスでの学生の姿そのものを象徴している。漠然と茂る低木類は整理、高木は全て保存し、加えて、視線を調停する中木やグランドカバーによって見通しの良い雑木林へと変容させている。
これらのキーワードによって構成される泉プロムナードのデザインは、どこか古典的なボキャブラリーとして捉えられがちだが、それは既存の構造を読み解き、空間に新たな骨格を与えるとともに、それぞれの造形に明快な意味をもたせた所産である。百周年という節目を迎えて再び大学創設時の原点に立ち戻り、大学の理念を象徴する場となり、人々が対話し、学び考える場となることを願っている。


名称 :日本女子大学 目白キャンパス 泉プロムナード
事業主:学校法人日本女子大学
所在地:東京都文京区
規模 :約2,500m2
竣工 :2006年9月
ランドスケープ:
カスヤアーキテクツオフィス
           +カネミツヒロシセッケイシツ
設備 :総合設備計画
施工 :日比谷アメニス
写真 :吉田誠

設計者選定プロポーザル最優秀案

掲載誌:『ランドスケープデザイン No.47 2006年4月号』
    『ランドスケープデザイン No.56 2007年10月号』
    『日本造園学会作品選集 2008』

日本女子大学 目白キャンパス 泉プロムナード
khdo2004-0505