四周を建築に囲まれた中庭型の庭デザイン。


 庭のデザインにあたって建築家から、①各部屋からの見え方を重視すること、②大げさではなくさりげないデザインであること、③素材感や質感を重視すること、④視線を遮る植栽は用いないこと、⑤奥行き感を感じられる庭としたい、という5つの要望があった。

 デザインは、鎌倉の山並みを抽象化した複数のマウンドを挿入して適度なアンジュレーションを生み出し、さらに抽象の度合いを高めるために庭全体をタマリュウの緑で覆い尽くした。マウンドには根府川石の帯を敷くことで椀型の形を視覚化することに貢献して庭にジェスチャーを与えている。そして、イロハモミジ、ヒメシャラ、エゴノキといった庭木を住宅の開口部や背後の見えに気をつけながら配置し、以前の庭で使用されていた自然石の添景をさりげなく据えて奥行き感を演出した。
 玄関までの飛び石には重厚で硬質な敷石を再利用したのに対し、中庭の周りには新たな素材として柔らかな触感の白河石や大谷石を使用して回遊の路とテラスを創出している。
 この簡潔なデザイン操作によって、山並みを背景とし緑豊かな鎌倉らしい住宅地風景のなかに、周囲とは異なる独自の中庭風景が生まれた。




名称 :鎌倉の家 ランドスケープ
事業主:個人
所在地:神奈川県鎌倉市
規模 :約1,280m2

竣工 :2013年5月
ランドスケープ:
カネミツヒロシセッケイシツ
建築 :小堀哲夫建築設計事務所

鎌倉の家 ランドスケープ
khdo2004-1104

写真:小堀哲夫建築設計事務所